監修 吉田隆行

D810Aシューティングガイド

夜空を彩る星雲や銀河の光は淡いため、撮影したままの状態では見栄えがよくありません。そのため、天体撮影の世界では、撮影後にソフトウェアを使ってコントラストを高めるなどの強調処理をして仕上げるのが一般的です。
ここでは、特に望遠レンズや天体望遠鏡を使って撮影した、星雲や銀河の写真を仕上げるための一次処理として用いられる画像処理の方法を紹介します。
また、D810Aの「微速度撮影」機能や「インターバルタイマー撮影」機能を用いた、天体の動きをドラマチックに表現する「微速度動画」の作り方も紹介します。
夜空を彩る星雲や銀河の光は淡いため、撮影したままの状態では見栄えがよくありません。そのため、天体撮影の世界では、 撮影後にソフトウェアを使ってコントラストを高めるなどの強調処理をして仕上げるのが一般的です。
ここでは、特に望遠レンズや天体望遠鏡を使って撮影した、星雲や銀河の写真を仕上げるための一次処理として用いられる画像処理の方法を紹介します。
また、D810Aの「微速度撮影」機能や「インターバルタイマー撮影」機能を用いた、天体の動きをドラマチックに表現する「微速度動画」の作り方も紹介します。

天体写真の画像処理の流れ(望遠レンズ・天体望遠鏡で星雲・銀河を撮影した場合)

  • ダーク補正
  • フラット補正
  • RAW現像処理
  • コンポジット処理
  • 画像強調等

ダーク補正:

ダークノイズを軽減する処理

フラット補正:

周辺光量の低下を軽減する処理

RAW現像処理:

ダーク・フラット補正後のRAW画像(ベイヤー配列のモノクロ画像)をカラー化する処理

コンポジット処理:

同じ構図で撮影した複数枚の画像を重ねて画像処理に耐える階調を作る処理

・ダーク補正、フラット補正には、天体写真の画像処理用のソフトウェアが必要です。また、RAWデータのみ可能です。
・ 2015年6月現在、発売されている天体写真の画像処理用ソフトウェアはD810Aで撮影したRAWデータに対応しておりません。

ダーク補正(ダークノイズ減算処理)

光が十分ある日中の一般撮影と異なり、夜空からのかすかな光を長時間露光する天体撮影では、長秒時ノイズなどの「ダークノイズ」が画面内に写り込みます。
これらのノイズは、通常の撮影ではカメラの「ノイズ低減」機能を用いて軽減しますが、たとえば「長秒時ノイズ低減」の処理には露光時間と同じだけ時間がかかるため、露光時間が長く撮影枚数も多い天体撮影では現実的ではありません。このため天体撮影では、撮影後にパソコンでダークノイズを軽減する「ダーク補正(ダークノイズ減算処理)」を行います。

「ダーク補正」には、本撮影画像とは別に撮影した、「ダークノイズ」だけが写った「ダークフレーム」と呼ばれる画像を使用します。
「ダークフレーム」は、レンズのキャップを装着したまま何も写らないようにして、本撮影と同じISO感度、露出時間、環境温度で撮影した「ダーク画像」から作成します。「ダーク画像」は、本撮影時に続けて撮影します。
「ダークフレーム」は、それ自体のS/Nを上げるため、複数枚の「ダーク画像」をコンポジット(「コンポジット処理」参照)して作成するのが一般的です。たとえば、本撮影画像をコンポジットする枚数と同じ枚数の「ダーク画像」を用意してコンポジットし、これを「ダークフレーム」として使用します。

「ダークフレーム」には、本撮影画像と同一箇所に「ダークノイズ」が写っているので、「ダークノイズ」が写り込んだ本画像から「ダークフレーム」のデータを減算することで、その分のノイズが軽減されます

本撮影画像

ダークフレーム

ダーク補正後

● 「ダーク補正」の効果を分かりやすくするため、冷却CCDカメラの画像を掲載しています。

フラット補正

一般的な風景写真などでも、レンズの絞りを開放で撮影すると、画像の四隅(特に青空が写った隅など)が中央に比べて暗くなっていることがあります。これは「周辺光量の低下」と呼ばれる現象で、特に明るいレンズの開放絞りで発生しやすく、レンズの絞りを絞り込むことである程度解消されます。
夜空の暗い星雲や銀河を撮影する天体写真の世界では、写真レンズを使用する場合は絞り開放および開放付近の絞り値で撮影するのが一般的です。また、天体望遠鏡を使用する場合は 、そもそも絞りを備えていないため絞り込むことができません。もちろん、ほとんど「周辺光量の低下」が発生しないレンズや望遠鏡もありますが、発生した場合は、撮影後にパソコンで「周辺光量の低下」を軽減する「フラット補正」を行います。
※ 天体撮影では一般的に「周辺減光」とも呼ばれます。

「フラット補正」には、下記の手順で作成した、「周辺光量の低下」の情報を持つ「フラットフレーム」と呼ばれる画像を使用します。

「フラットフレーム」の作成手順

1. 「フラットフレーム」の元にする画像を撮影する本撮影と同じ光学系を用いて、望遠鏡のフードやレンズ前面にトレーシングペーパーや乳白色アクリル板などを平らにセットして拡散光が均一に入るようにし 、薄明時などに光学系を空に向けて、本撮影と同じピント、シャッタースピード、絞り値、ISO感度で、本撮影と同数以上の枚数を撮影します
※露光時間は、短すぎると高精度なフラット補正ができないため最低でも数秒以上必要です。ヒストグラムの山が左端から少し離れたくらいを目安に、画像の明るさを見ながら調整します。

2. 「フラットフレームのダーク補正」に用いる画像を撮影する 「1.」の撮影と同じ光学系、同じ設定で、同じ枚数「ダーク画像」を撮影します(「ダーク補正」参照)。

3. 「フラットフレームのダーク補正」に用いる「ダークフレーム」を作成する 「2.」で撮影した「ダーク画像」をコンポジット(「コンポジット処理」参照)して、「フラットフレーム」の「ダーク補正」に用いる「ダークフレーム」を作成します。

4. 「フラットフレーム」の元画像を「ダーク補正」する 「フラットフレーム」のノイズを軽減するため、 「3.」で作成した「ダークフレーム」を用いて、「フラットフレーム」の元画像を1枚ずつ「ダーク補正」します。

5. 「フラットフレーム」の元画像をコンポジットする 「フラットフレーム」のS/Nを向上させるため、 「4.」で「ダーク補正」した「フラットフレーム」の元画像をコンポジット(「コンポジット処理」参照)して、「フラット補正」に使用する「フラットフレーム」を作成します。

「フラットフレーム」は、本撮影画像と同等の「周辺光量の低下」の情報を有しているので、「周辺光量の低下」が発生した本撮影画像を「フラットフレーム」のデータを用いて処理することで、「周辺光量の低下」が軽減されます。

本撮影画像

フラットフレーム

フラット補正後

コンポジット処理

「ダーク補正」、「フラット補正」で「ダークノイズ」と「周辺光量の低下」を補正したRAW画像はベイヤー配列のモノクロ画像なので、RAW現像してカラー化します。しかし、単にカラー化しただけで写っている天体自体の淡さは変わりません。この画像に対してコントラストを高めるなどの強調処理を行うと、 画像が荒れ、ざらつき感のある仕上がりになってしまいます。これを防ぐため、同じ構図で撮影した複数枚の画像を重ねて画像情報を蓄積させ、ノイズを平均化して強調処理に耐える画像を作る「コンポジット処理」を行います。

「コンポジット処理」では、複数枚(多くの場合は4枚以上)の画像を加算平均合成することでS/Nを向上させます。 なるべく多くの枚数を合成した方が、より滑らかで加工耐性の高い画像となります。

複数枚の画像

コンポジット処理後

複数枚の画像を重ねる「コンポジット処理」では、「位置合わせ(アライメント作業)」が重要です。同じ構図で複数枚撮影したつもりでも、拡大するとわずかながら星の位置がずれていることが多々あり、そのまま重ね合わせると星が二重になってしまいます。「位置合わせ」は、天体写真の画像処理ソフトウェアを使用すれば、ほぼ自動で行えます。

微速度動画

ゆっくりとした天体の動きを、時間を凝縮したドラマチックな映像で再現できる「微速度動画」。D810Aでは2種類の方法で「微速度動画」を作成できます。

1. 「微速度撮影」機能を使う方法 D810Aは、カメラの設定画面で撮影間隔と撮影時間を設定するだけで簡単に「微速度動画」を生成できる「微速度撮影」機能を搭載しています。一般的に必要となる撮影後の編集などは一切不要(任意の画像処理はできません)。しかも、露出平滑化機能を備えているので、夜明けや夕暮れのような明るさの変化を滑らかに表現したいシーンを含んでいても、AモードなどのAEで撮影すれば、微速度動画再生時のチラツキを効果的に低減できます。撮影時間は最長7時間59分まで設定可能。最長で20分の「微速度動画」を記録できます。
• 動画ファイルのみが記録され、静止画ファイルは記録されません。
• 記録コマ数(撮影回数)=撮影時間(秒)÷撮影間隔(秒)
• 画像サイズ/フレームレートは動画の設定が適用されます。
• 微速度撮影による動画の再生時間(秒)=記録コマ数÷フレームレート
• 生成されるタイムラプスムービーのアスペクト比は、16:9になります。

2.「インターバルタイマー撮影」機能を使う方法 「インターバルタイマー撮影」機能を使うと、設定した撮影開始のタイミング、撮影間隔、撮影回数でカメラが自動的に静止画を撮影します。最大9999コマまで撮影可能。露出平滑化機能も備えています。撮影画像を市販のソフトウェアを使って動画化することで、「微速度動画」を生成できます。FXフォーマット、画像サイズL時には7360×4912ピクセルの大きな画像が得られるので、1920×1080ピクセルのフルHDに仕上げる場合でも、パンやズームイン・アウトなど、映像表現の自由度の高い「微速度動画」を生成できます。また、RAWで撮影し、1コマずつ天体画像としての適切な画像処理で仕上げたうえで、微速度動画を作ることもできます。
• リモートコード MC-36Aを使ってインターバルタイマー撮影を行うと、メモリーカードの容量やバッテリー残量の許す限りコマ数無制限で静止画が得られます。ただし、露出平滑化機能は使用できません。

サンプルムービー

© Johannes Schedler

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